テーマ3 力の使い道


仁先生

今回は、俺が授業を受け持つ

ハイデ

何だアンタ

ホントに先生だったのか。

いっつも飯作ってくれるから

寮母か何かだと思ってたぜ

仁先生

俺の担当は”力”

君らの持つ、”力”の本質と

使い道についてだ

ネン

力というと…

膂力や腕力、武力など

…ですかな

仁先生

それらも”力”の一部だが…

君らの世界で”力”と呼ばれる

ものがどれくらいあるか

わかるか?

トウ

知力や胆力なんかも

含めると…

数えきれないですね

仁先生

そう。呼称すれば限りはない。

座っているのも

飽きてきたろうから

場所を変えるぞ

ノッタ

あれ?ここ

僕の高校のときの体育館だ

仁先生

悪いが

記憶から辿らせてもらった

ノッタ

記憶見れるの!?怖!

仁先生

さて、今回はここで

立ったまま授業を行おう。

“力”の本質とは

”命”そのものだ。

”力”の全ては

生きることに直結している。

レン

生きること…

仁先生

今、この場に

存在しているだけでも

”力”を複数使っている。

分類すると

視力、聴力、発声力、

立っているための体力、

思考力、判断力、

話を組み立てる計算力、

先を見据える想像力、

…もっと細かくもできる。

レン

そうなんだろうけど…

何が言いてえんだ?

仁先生

君らは自分が”力”を

使えている意識が足りん。

自分のやっていることが

解っていなければ

道に迷うのも当然だ

レン

へえ、言うじゃねえか。

こちとら修羅場を何度も

くぐり抜けてんだ。

生き残るための”力”なら

それなりに身につけてるぜ

仁先生

その感性が

浅い、と言っている

レン

ケンカ売ってんのかよ…。

おあつらえ向きに

こんなとこに連れてきたんだ。

はなっからそのつもりか?

仁先生

ハイデ。君の言う”力”とは

何だ?

ハイデ

自分より弱ぇヤツを守れる

力だよ。

俺には足りなかったがな

ネン

私もハイデと同意見だ。

武とは己が欲を満たすもの

に非ず。

”力”なくば誰も護れず

武は道になりえない

仁先生

そうか。

では君らから見ると

他者は護らねばならない

弱者ということか?

ネン

主君のみならず

女子供を護るも武士の努め。

”力”のある者が世界を

護るは世のならわしでは?

仁先生

…他の者も同意見か?

リセ

う~ん…

財力や権力も”力”と考えたら

それがないあたしらは

そういう大きなものや

強いヤツに

守られなきゃ生きていけない。

そういうことじゃないの?

生徒バッタ

私のお店も

バックのやっちゃんが

守ってくれないと

続かなかったからねえ…

仁先生

…そうか。

ハイデ

口で言うのは簡単だよ。

実際、何も守れなかった俺が

言えるこっちゃねえが…

アンタが奪われる立場に

なっても同じセリフが

言えんのかね

容赦ねえぜ。人間社会は

仁先生

…やはり場所を変えて正解だな

君らは”力”の表面しか

見えていないようだ

ハイデ

天さんの話は聞きやすいが

アンタの言葉は

いちいち癇に障るな

…ちょっとスパーリングでも

しねえか?実戦形式でよ

仁先生

…無論、はじめから

こうなることは予想していた。

私に異議のあるものは

まとめてでも

武器を使用しても構わん

ハイデ

まあ、身体もねえし

しにゃあしねえだろうから

全力で…シッ!!

仁先生

…当たらんな。

今のジャブにすら

俺はカウンターを合わせること

ができたぞ?

ハイデ

ジャブにカウンター…?

んなことできるわけ…

…くっ。何だこいつ

…隙が全くねえ…!

仁先生

…こちらの力量が解る

理解力と判断力は

使えているようだな。

どうする?続けるか?

ハイデ

今の動きで理解した。

ハイデに勝ち目は…

無論、私にも

ハイデ

…あの御仁

ハイデ殿の身体が動く刹那で

軌道、速度、全てを判断し

常人ならざる速度で

動いている。

あれでは拙者が刀を抜いたとて

かわされるであろうな

仁先生

…まだやるか

ハイデ

こんなっ…!

こんなの…!

何でっ

…当たれ…!

当たれよっ!!

仁先生

………

仁先生

ハイデ…

ハイデ

ハァッ…ハァッ…

ちきしょう…

…ちきしょう!!!

…何で…!

何で俺は…!俺は!!

ハイデ

かわさず…

…受け止めた?

仁先生

自分が許せないか、ハイデ。

仲間を護れなかった自分が

ハイデ

…!!

…ああ、そうだよ!!

俺のわがままに巻き込んで

仲間も全員…逝っちまった!!

なのに誰にも会えてねえ!!

俺がもっと…もっと強けりゃ…

仁先生

お前は無力なんかじゃない。

”力”の使い方が

解っていなかっただけだ

ハイデ

使い方…?

仁先生

“力”は誰にでもある。

そして

生きている限り

意識がここにある限り

常に使っている。

俺はそれを伝えたいだけだ

ハイデ

……

仁先生

皆に聞くぞ。

君らの言う”力”が

人類全員にあれば

世界は生きやすくなるのか?

ノッタ

…人類…全員に…

レン

…結局、”力”があっても

心が伴っていないと

滅ぼしあう未来しか…

見えないわ

ハイデ

じゃあ…

”力”なんて

いらねえじゃねえか…

何のためにあるんだよ?

仁先生

”力”とは”命”そのもの。

この世界に

”力”がない人間はいない。

つまり…

無力な人間など

存在しないということだ。

仁先生

俺の授業では

今後、この”力”についてのみ

テーマとする。

今日はここまでだ。

天の授業の進行具合を見て

進めていこう。

ハイデ

……仁さんよ

仁先生

…何だ?

ハイデ

…今日の晩飯は?

仁先生

ビーフストロガノフだ

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